山口盆地考 2018 第11回 平成31年3月25日(月)19時~21時

山口盆地考2018(第11回)
平成31年3月25日(月) 19:00~21:00
講師 吉崎和彦(YCAM学芸員)
テーマ :「上海ビエンナーレ2018報告会」
会 場 山口情報芸術センター・多目的室
参加人数 19名

講座内容
上海ビエンナーレ2018は、上海当代芸術博物館を会場に、2018年11月10日~2019年3月10日の会期で開催された。1996年の開始から第12回目を迎え、中国最大の現代美術展として注目を集める本展だが、今回、チーフキュレーターのクアウテモック・メディナが掲げたテーマは「Proregress –Art in an Age of Historical Ambivalence」だった。「Proregress」は、アメリカの詩人E・E・カミングスが「progress(前進)」と「regress(後退)」を掛け合わせてつくった造語である。
本講座では、展覧会の内容と、巨大な美術館が毎年のように建設され、巨大資本が動き続ける上海のアートシーンを紹介しながら、メディナが「Proregress」というテーマを掲げた意図について考察する。

参加者からの感想や、科目実施を通して学んだこと
参加者は、講師が現地のキュレーターから聞いたという、上海の美術市場の活況と反比例する実験的な表現の減少についての問題意識を共有した。また、万博跡地の活用、私設美術館の建設ラッシュなどを背景に、チーフキュレータ―のメディナが提唱した「プロリグレス(禹歩)」が、中国のみならず現代社会全体について一考すべき問題提起であることも、さまざまな出品作品の解説を通して学ぶことができた。近年では、上海で非営利ギャラリーが活動休止を余儀なくされる状況がある一方、従来保守的と考えられていた北京でLGBTの表現を扱うオルタナティブスペースが誕生しているといった対比も興味深かった。さらに、中国における検閲の話から、日本の美術館で自主規制という名の「見えない検閲」があることをめぐっても意見交換がなされた。