講座内容
現代アート考【番外編】の第3回目。講師の田辺氏は宇部で生まれ育ち、現在は山口市に住んでいる。画家であった祖父とともに幼少時から現代アートの展覧会や、宇部の野外彫刻展、河出書房の『世界美術全集』に接し、2003年の山口情報芸術センター(YCAM)の開館以降は、市民企画 meets the artist(mta)に積極的に参加して観客参与型の新しいアート表現に触れてきた。講座では、「第1部 私の美術体験 art chronicle」で、田辺氏の美術体験の原点とYCAMのmtaの各企画を振り返り、「第2部 リレーショナル・アート概論」で、リレーショナル・アートの思想的背景と代表的な実践例、その発展形としてのソーシャリー・エンゲージド・アートについて紹介頂きいた。まとめとして、高山明氏の「東京ヘテロトピア」やヴェネツィア・ビエンナーレ日本館の「Cosmo-Eggs|宇宙の卵」を例に、混在郷を体感させるリレーショナル・アートへの期待が語られた。
参加者からの感想や、科目実施を通して学んだこと
YCAMのmeets the artistを振り返るパートでは、「山口市営P」(2008年)や「キモチミエルカ」(2010年)の活動報告DVDによる映像を鑑賞。12年前、10年前の参加者の姿に「若い」という声が次々に聞かれ、懐かしさを感じた者が多かった。
リレーショナル・アートやソーシャリー・エンゲージド・アートの解説に対して、「知らなかった用語や作例も多く、まだまだ勉強しなければという思いを強くした」という感想も聞かれた。配布資料は6ページにわたり、mtaや宇部市における現代アートの展開について詳細な年表に加えて、リレーショナル・アートに関する20件におよぶ詳細な参考文献が紹介されており、受講後に各自が勉強を進める上で役立つものになっていた。また多くの関連書籍を会場に持ち込んで頂き、その場で回覧して頂いたことも有難かった。
質疑応答では、リレーショナル・アートとソーシャリー・エンゲージド・アートについて、前者はヨーロッパ発、後者はアメリカ発といった違いもあるのではないか、といった意見も出た。