現代アート考 第5回
令和元年12月27日(金)18:30~20:00
番外編2 「東京といくつかの地方アート・シーン 1993-2019」
(講師:末永史尚, 東京造形大学准教授)
会場:YCAM 2F多目的室
【問合せ先:藤川】 e-mail : fujikawasatoshi@gmail.com
参加人数 18名
講座内容
現代アート考【番外編】の第2回目。番外編では、通史を相対化することをねらいとし、各自の経験や独自の視点を大切にして、美術の歴史を振り返る。講師をお願した末永氏は、1993年から現在までの美術をめぐる出来事を、1. 個人の出来事、2. 実際に見て印象に残っている展覧会、3. 当時は見ていなかったが後々のアートシーンに影響があった展覧会、4. 美術に関する出来事、5. 大きな出来事、の5つの枠組みで整理した年表を配布。それらについてコメントしつつ講座を進めた。特に、末永さんと同世代のアーティストたちと社会との関係、その上の世代、下の世代でぞれぞれ変化を指摘し、美大を卒業して表現者として活動する足場を開拓するための時代状況が異なっていたことに注意を喚起した。
参加者からの感想や、科目実施を通して学んだこと
末永さんは10月、Do a Front グループ展『Eepiphany Garden 2 ~ 空家のかくれんぼ』展でも出展&レクチャーを鑑賞・拝聴して日常空間に密かに紛れている幾何学パズル的な作品に強く惹かれました。
配布されたハンドアウトにまとめられた、末永さんご自身の高校生のころからのアート体験に基づいた、心に残られた&出展・企画など関わられた展覧会をリストアップ、あわせて各時代の美術界トピック、大きな出来事(主としてアートに対する圧力など負の要因が多かった)など精細なクロニクルを軸にした講義で、なかでも印象に残ったのは新進作家の展示スペースが貸し画廊から商業画廊あるいはそれと相反する Do a Frontのようなオルタナティブな展示空間やコレクティブ(グループ)展、所沢ビエンナーレ(引込線)やヨコハマトリエンナーレなど芸術祭への推移を議論していくことで、そこから芸術活動も単独からコレクティブアートへと変わってきていることで、日本のアートシーンの主軸がよりコレクティブ(協働グループ)、リレーショナル、そして東京中心から徐々にネット環境などの技術革新もあいまって活動拠点の地方への分散または東京・地方両軸とした活動への変化などが読み取れてきました。
また、受講生からの質問からも、アーティスト、キュレーター、ギャラリーオーナー、そして観者(鑑賞者)と立場によって異なったアートシーンの捉え方がより拡張したアートワールドを学んでいく上でもきわめて有効な視座だと思いました。
最後に末永さんがおっしゃった、「みなさんもぜひ各自のアート・クロニクルを記録してみてください」の言葉に、制作や鑑賞と立場は違えど自分自身のアート・アーカイブを構築していくことと新たに色々な立場の方のアート体験から学んでいくことでこれからも現代アートの美学・美術史の研究を進めていく上でもとてもいい視座を頂けたように感じ取れました。